mogumogumo.jp

モグ オフィシャル サイト

MENU

太陽フレア

 短編小説集《ショートストーリーズ》
太陽フレア

 

作品情報
ジャンル:SF

あらすじ
「…本当に太陽フレアなのか?」今、迫り来る現実__

ボイスブック
この作品はまだ音声化されておりません。音声化希望。ボイスアクターさん、どうぞぜひ。

 


 

 


 

太陽フレア

太陽フレアよ」
横たわる佐和(サワ)は苦しみながら、確かに言った。
「…本当に太陽フレアなのか?」
戸惑う俺はしばらくの沈黙の後、聞き返す。苦しそうにしながらも佐和は強い意志を宿した目で俺を見て言う。
「えぇ。もう太陽フレアで間違いないわ」
真っ直ぐな眼、この眼に惚れたんだとこんな時だというのに思う俺がいる。だが、やはり間違いであってほしいと強く思う俺がいる。

太陽フレアだとして、それを迎えた場合に起きることを考える。太陽フレアだとして、それを回避する方法は無いのかと考える。太陽フレア以外の可能性を、俺は考える。ショート寸前の思考回路、辿り着くべき答えは全く浮かばず曖昧な言葉を投げ掛けてしまう。
「どうにかならないのか」
佐和の目は俺の目から一度も逸らされない。
「大樹(ダイキ)、現実をしっかりと受け止めるのよ。太陽フレアで決まりなの」

現実を受け止められない俺が弱いのだろう。わかっているのだが、やはり求めてしまうのは逃げ道ばかりだ。
太陽フレア…。太陽…フレア…。太陽…。せめて半分することはできないだろうか…それなら問題なく受け止められるんだ」
太陽フレアの爆発力を甘くみない方がいいわ。中途半端に半減させるなんて無駄よ。全てを受け止めるべきだわ」
全てを、その言葉が絶望の鐘のように俺の頭の中で鳴り響いた。酷い眩暈に崩れ落ちてしまいそうだ。あぁどうしてこんなことになってしまったんだ。これまで何も問題なくやってこれたのに、どうして…どうしてなんだ。
いや違う。こうなることを俺はわかっていた。こうなる現実から逃げていただけなんだ。本当は…本当は4ヶ月前、佐和が太陽フレアの可能性を口にした時、俺はもうわかっていた。受け止めるしかないんだよな。
ひと呼吸置き、俺は笑って言った。
「受け止める…よ。あぁ、受け止める。太陽フレア
そっと優しく佐和も笑った。
「そうよ大樹、受け止めるのよ」

「森山さーん」
扉が開き、俺たちは呼ばれる。
「立ち会い出産ということで、それではこのままお2人とも入室していただきますね」
いよいよこの時が来た。一度、佐和と目を合わし、再び看護師の方を向く。
「はい、よろしくお願いいたします」
俺と、苦しみながらの佐和の声は重なった。

俺たちにはもう迷いなどない。さぁ分娩室へと行こう。息子よ、父さんも母さんも決意を胸に君の誕生を迎えよう。君の名は森山太陽フレア、素晴らしい爆発力こそが君の名前だ。

 

 

 

f:id:koenohon:20210818190350j:plain

いかがでしたでしょうか。《太陽フレア》楽しんでいただけたでしょうか。この作品はネット上の架空の百貨店・八雲百貨店、その中の八雲図書館にて掲載した書き下ろしです。公開当時「自身初のSF」を謳っていました。そして今回もジャンル表記をSFとしています。もちろん内心では「よくもまぁSFを謳えるな」と思っていますが、まぁせっかくなので「これはSFです」というPRを貫き通していきたいと思います。どうか広い心で受け止めてくださいませ。

 

 

“ショートストーリーズ” 次の作品
《美味しい珈琲は美味しい》へ
(※近日アップ予定です)
 

 

“ショートストーリーズ”目次へ戻る

 

《Menu》へ戻る