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なにかのたまご

作品情報
ジャンル:童話
賞:RKBラジオコンテスト 入賞作品

 あらすじ
ハルはシュンくんと暮らす猫。シュンくんはサッカーをするのが大好きで、ハルはシュンくんがサッカーをしているのを見るのが大好き。ある日シュンくんとハルの前にふしぎな“なにかのたまご”が現れた__
これは“なにかのたまご”に出会い、成長していくシュンくんをハルの目線で贈る物語。 

 

 

 ぼくの名前はハル、シュンくんの猫。ぼくは知ってる、シュンくんはサッカーがすっごく上手なんだ。ぼくの特等席はお家で一番日当たりのいいこの窓で、ぼくはいつもここでシュンくんのサッカーを見ているよ。

 お家の庭はシュンくんの練習場。シュンくんよりも大きい、ママよりもパパよりも大きい、空まで届きそうな大きな木が2本、塀のそばにあって、その大きな木と木のあいだがシュンくんのゴール。シュンくんは大きな木と木のあいだを狙って、思いっきりシュートをするよ。

 だけどシュンくんは少しだけ寂しそう。ぼくは知ってる、塀のすぐ向こうは空き地になっていて、いっつもみんながサッカーをして遊んでいるって。シュンくんがホントはみんなと一緒にサッカーしたいと思っていること、ぼくはホントは知っているんだ。

 そんなシュンくんに、あれは日曜の朝の不思議な出来事。朝ごはんを食べたらすぐにサッカーボールを持って外に出たシュンくんは、庭で見つけたんだ。

 大きな木と木のあいだに、綺麗な緑のなにかのたまご。リンゴみたいに大きくて、みたこともない不思議なたまご。なにかのたまごを両手で持って、シュンくんは首をかしげて考えこんで。そしてシュンくんは決めたんだ。まだ温かかったそのなにかのたまごを、守っていこうって。

 その日、シュンくんはサッカーをしなかった。大きな木の下に枯葉のベッドを作って。シュンくんは一日中、そこで過ごした。太陽のぽかぽかとシュンくんの体のぬくもりで、なにかのたまごは包まれていたんだ。夜にはたっぷり枯葉の布団をかけて、「また明日ね」ってシュンくんはお家に入った。

 

 月曜の朝、目覚まし時計がなった瞬間ビシッと止めて、シュンくんはなにかのたまごの側まで走っていって。一晩変わらず枯葉の布団に包まれるなにかのたまごを見て一安心。

 火曜の午後には一大事。学校から帰ったシュンくんを待ってたのは、なにかのたまごを狙う大きな犬。
「割れちゃうから乱暴にしちゃダメだよ!」
 大きな犬は怖かったけれど、なにかのたまごを守るため、大きな犬となにかのたまごのあいだに立って。そしてシュンくんは大きな犬をぎゅって抱きしめたんだ。大きな犬は喜んでシュンくんのほっぺをペロリと舐めた。シュンくんも嬉しくて大きな犬に言ったよ。
「ちゃんと僕の言葉を聞いてくれてありがとう」

 水曜の朝にビックリ。どうしてだろう、なにかのたまごは大きな木の上に移動してた。
「そんなとこから落ちたら割れちゃうよ!」
 シュンくん、高いところは苦手だけど、無我夢中で大きな木をよじ登って、なにかのたまごを抱えて降りてきたよ。

 木曜の夕方、学校から帰ってきたシュンくんはいつものように枯葉のベッドでなにかのたまごを抱きしめて。ブルル。
「あれ、気のせいかなぁ」
 なにかのたまごが中で動いた気がしたよ。なにかのたまごのなにかのヒナに会えるまで、きっともう少しだよ。

 金曜の朝、目覚まし時計よりも早く起きて動き出して。大きな木の下でシュンくんが見たものは。なにかのたまご、の抜け殻。なにかのたまごから産まれたなにかのヒナは、もうどこかへ行ってしまっていたんだ。シュンくんはなにかのヒナを一生懸命探したけれど、やっぱりなにかのヒナは見つからなかった。
 なにかのヒナに会えなくて悲しかった、でもシュンくんは泣かなかった。
「きっと元気に産まれてくれたんだね。よかった」
 シュンくんは涙をこらえて、そう笑った。そしてシュンくんは言ったんだ。
「なにかのたまごは頑張って産まれてきて、頑張ってどこかへ行ったんだ。だから僕も頑張らなくちゃ」

 

 あれから少しだけ時間がたったけれど、シュンくんはお家の庭でサッカーをしなくなった。シュンくんのサッカーを見るのが好きだった僕のホンネはやっぱり少し寂しかったのだけど、でも大丈夫、かわりに今では塀のむこうから、みんなと楽しそうにサッカーをしてるシュンくんの声が聞こえてくるようになったから。

 なにかのたまごは結局ね、なんのたまごかわからなかったけれど。ぼくはね、思うんだ。あれはきっとシュンくんの、ゆうきのたまごだったんだってね。

 

 

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《なにかのたまご》お楽しみいただけましたでしょうか。この作品は2021年8月13日時点で25人のアクターが音声化してくれた、多くの方の力で育てられている作品です。これからも、もっともっと多くの方に届けていきたい作品です。もし幼稚園保育園などでの読み聞かせに使ってもらえたらどんなに幸せだろうなどと考えちゃったりもしています。そしてもしも、この作品の音声化・映像化・書籍化などにご興味をもって頂ける方がおりましたらご連絡頂けましたら、出来る限り御協力させていただきます。 

 

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