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茄子を積む

 短編小説集《ショートストーリーズ》
“雨の日には”

 

作品情報
ジャンル:日常(ジャンルの分け方が分からず)

あらすじ
食すのではない、積むのだ。茄子こそが格闘家に最適だ。__

ボイスブック
この作品はボイスアクター・ようじろうにより音声化されています。

 

 

この時期、茄子こそが格闘家に最適だと、佐々木修一は知っている。食すのではない、積むのだ。茄子こそが格闘家に最適だ。

佐々木は総合格闘家である。佐々木は格闘技の合間に日雇い現場へと現れる。いや、日雇いの合間に道場へと現れるのか。ともかく佐々木修一は日雇い現場で得た給料にて生活を繋ぐ。

そんな“日雇い佐々木”にも拘りがある。例えば、今のこの時期ならば仕事は茄子に限るのだ。片道12km、ロードバイクを走らせ現場へと向かう。到着後、入念にストレッチ。即座に動ける身体を作り、その時を待つ。トラックが現れる。10tトラック3台が本日の佐々木に与えられたミッションだ。荷台のウイングがゆっくりと開く。佐々木は荷台へ飛び乗る。腕は使わず全身をバネにした最大限の跳躍を。

 

積み込み開始、すでに万全のコンディションとなっている佐々木の動きは軽快。茄子の入った段ボールはおおよそ8kg。運転手と2人、1000箱ほど積み込めば1台分が終わる。8kg、それは負荷としては随分軽い。だが200箱、300箱と積むうちに疲労は必ず溜まる。身体の動きが落ちてきた時こそ、さらに加速させる。佐々木は己の身体を追い込む。

1台目の積み込みが完了。佐々木は「1ラウンド終了。今日もいい感じだ。」と呟きニヤリと笑う。佐々木にとって、茄子を積む作業は格闘技の為のトレーニングのなのだ。わずかなインターバルの後、次のトラックに飛び乗る。腕、肩。上半身はやはり先程より重く感じている。脚にダメージは無く、まだ軽やかに動く。ステップワークをさらに加速させる。加速に合わせ上半身への負荷も高まるが、ステップに遅れをとらぬよう背中から肩、腕、指先に至るまでの連動性を意識し筋肉を動かす。

2ラウンド終了。本日最後のトラックの到着が少し遅れているようだ。佐々木はアンクルポップ、フロントランジ、サイドランジ、スクワット、そして蹴り技を中心としたシャドーを繰り返し、下半身をイジメ抜きながら待機。

そして最後のトラックが到着。荷台へ飛び乗る佐々木の疲労は相当なものになっている。だが最後のトラック、3ラウンドこそ、どう動くかが大切だ。リズムを崩さず、フォームに細心の注意をはらう。筋繊維が悲鳴をあげるたび「それで良い、今こそ振り絞れ」と全身へ指令を送る。肉体が限界を超え進化する過程を楽しむ。

 

3時間、全ての茄子が詰み終わる。「お先に失礼します!」大きな声でそう言うと佐々木は軽快にロードバイクへ乗り、現場を後にする。熱を持った身体へと吹き付ける風が心地よい。12kmの帰り道、早く家に着く事のみを考えロードバイクを走らせる。

道場での稽古が始まる夕方までは、愛する娘との楽しい時間だ。この大事な時間を持てる仕事が茄子だ。トレーニングとなり、給料を頂け、そして大事な時間をしっかりと持てる。この時期、茄子こそが格闘家に最適だと、佐々木修一は知っているのだ。ちなみに佐々木曰く、“娘はパパ似でキュート”との事である。

 

 

 

 

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いかがでしたでしょうか。《茄子を積む》楽しんでいただけたでしょうか。この作品を《mogumogumo.jp》へと移設するにあたり久しぶりに僕も読み返してみたのですが何を

伝えたい短編なのかよくわかりませんでした。むしろ何をどう面白いと思って書いたのでしょうか、ちょっと問い詰めたいくらいです。そんな作品を「楽しんでいただけたでしょうか」とか言って申し訳ありません、てへぺろ

 

 

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